ベトナムの伝統的な飲み物といわれるベトナムコーヒー。
練乳(コンデンスミルク)を入れるというちょっと変わった飲み方をします。
飲んだことがないという方も多いと思いますが、厳密に言うと、日本人の多くはベトナム産のコーヒーを口にしています。
実はベトナム産のコーヒー豆というのは、日本のインスタントコーヒーや缶コーヒーにはよく使われており、気付かずに飲んでいる人も多いのです。ですので、意外と身近な存在だったりします。
そこで今回は、ベトナム産のコーヒー豆の特徴や種類、練乳を使った飲み方などについてお伝えしていきます。ベトナムコーヒーはまずいという噂についても掘り下げていきますので、ぜひ最後までご覧になってくださいね!
ベトナム産コーヒー豆の特徴
日本ではインスタントコーヒーなどに使われることが多いベトナムのコーヒー豆ですが、本当に噂どおりまずい豆なのでしょうか?
品質面と併せて、特徴を詳しく見ていきましょう。
ベトナム産コーヒー豆の味はまずい!?
ベトナム産コーヒー豆の特徴は、苦みや渋味が強く、酸味や風味はほとんどないかなりクセのある味です。ハッキリ言ってしまえば、ブラックをストレートで飲んだ場合、多くの人がまずいと感じるはずです。
人によっては「焦げたようなにおいがする」「苦い泥のようだ」と表現する人もいるほど。
ちなみに現地でベトナムコーヒーを頼む際、砂糖も練乳もミルクもいらないと言って注文すると、店員さんは非常に驚くそうですよ。「そんなものを本気で飲むのか?」と(笑)
ですので、普通は砂糖や練乳をたっぷり入れて飲みます。味をごまかしているという見方もできますが、この甘いコーヒーを美味しいと感じる人が多いのも事実です。
コーヒー豆の品質
ベトナム産のコーヒー豆には、高品質なものはほとんどありません。
理由は単純で、ベトナムには上質なコーヒー豆を作るために必要な標高が足りないのです。
通常、コーヒー豆の栽培では、標高が低い土地よりも高い土地の方が、質の高いコーヒー豆ができます。ですが、ベトナムでは標高が高い土地で栽培することができないため、高品質な豆を作ることができないというわけです。
そんなベトナムのコーヒー豆ですが、実は質が低くても需要は高いのです。
ベトナム産コーヒー豆の最大の利点として、安価で安定した量を供給できるという点があります。そこに目をつけたインスタントコーヒーや缶コーヒーの企業が、ベトナムのコーヒー豆を使用して商品を作っているのです。
ベトナム産コーヒー豆の種類
ベトナム産のコーヒー豆には、日本の焙煎業者が取り扱うような有名な銘柄や産地の豆はほとんどありません。
これは標高の低い土地と関連して、生産しているコーヒー豆の品種自体にも理由があります。
コーヒー豆の原種
コーヒー豆の原種は大きく分けて2種類。
「アラビカ種」と「ロブスタ種」という原種に分かれます。
(厳密には3種類ですが、リベリカ種は全体の1%未満であり品質も低い為割愛)
ロブスタ種(カネフォラ種)
ベトナムコーヒーはこの「ロブスタ種」に入ります。
ロブスタ種はカネフォラ種とも呼ばれる原種で、標高が低く気温が高い土地でも育ち、とても病気に強いのが特徴です。
ロブスタコーヒーノキは、1本から大量のコーヒー豆が採れるため、大量生産にはとても向いています。丈夫で大量に採れ、安定した供給が保たれることから、インスタントコーヒーや缶コーヒーを作る企業にとっては、うってつけのコーヒー豆なのです。
アラビカ種
アラビカ種はアラビカコーヒーノキからなる原種。
いくつもの品種があり、それぞれの品種によって味や香りが異なり、質もさまざまです。
コーヒーの実の付き方や収穫量も品種によって変わるので、安定した生産量を確保するという意味では、ロブスタ種の方に軍配が上がります。
ただ、品質の良さ、味や香りなど、美味しさという点ではやはりアラビカ種の方が高く評価されています。スペシャルティコーヒーと言われる最高級のコーヒー豆は、例外なくアラビカ種となっているのがその証拠です。
ベトナムはロブスタ種の生産量世界一
ロブスタ種はアラビカ種に比べ、品質面で劣るとはいいながらも、ロブスタ種の需要はかなりのもの。
ベトナムのコーヒー豆の生産量は、なんとブラジルに次いで世界第2位なのです!
そして、ロブスタ種のみに限定すると、世界一の生産量を誇ります。
これはやはり、インスタントコーヒーや缶コーヒーによる影響でしょう。また、ブレンドコーヒーを作る際、ロブスタ種はかさ増し用として配合されることも多いです。
こういった理由から、品質では劣るといわれながらも、ベトナムのコーヒー豆は世界から必要とされているのです。
ベトナムにもあるアラビカ種
ロブスタ種が主流ではありますが、実は少ないながらもベトナムではアラビカ種のコーヒー豆も作られています。
その中でも有名なのが「ルビーマウンテン」という銘柄です。
ベトナムにあるルビーの産地で採れることから、その名が付いています。
柔らかな味わいが特徴で、優しい酸味とコク、苦みもキツくなく、バランスの良いエレガントな味のコーヒー豆です。ベトナムで栽培されているアラビカ種の中でも、最上級のコーヒー豆なので、品質もそう悪くはありません。一度は試す価値がある銘柄ですよ。
練乳入り!ベトナムコーヒー独自の飲み方と入れ方
ベトナムコーヒーはまずいとも言われますが、それは何も入れずにストレートで飲んだ場合のお話です。ベトナムの人たちは、ロブスタ種のコーヒーを美味しく飲むため、独自に工夫をしてきました。
ここからは、そんなベトナムコーヒー独自の飲み方や入れ方について見ていきましょう!
植民地時代から続く独自の飲み方
ベトナムコーヒーの飲み方の特徴は、練乳をたっぷり使って甘く仕上げることです。
1857年にベトナムがフランスの植民地になった際、フランス人がコーヒー豆を持ち込んだとされています。そこからコーヒー豆の栽培が始まり、その後もずっと現在に至るまで続いているというわけです。
ベトナムを植民地としていた当時のフランス人たちは、苦みや渋味が強いベトナム産のコーヒーに、生乳をたっぷり入れて飲んでいたそうです。その名残りが今のベトナムコーヒーなのですが、生乳は痛みやすいため、缶に入った練乳を使うようになったといわれています。
専用の道具を使った美味しい入れ方
入れ方自体も独特で、使用するのはフランス式のフィルター。
これこそ、フランスの植民地時代からずっと受け継がれている入れ方です。
普通のフィルターよりも抽出に時間がかかり、じっくり5~10分はかかります。
もし金属製の「カフェ・フィン」というフィルターを用意できるのならば、本格的に入れることができます。なければ通常のフィルターでもOKです。また、ベトナムのコーヒー豆があれば一番いいのですが、ない場合は深煎りのコーヒー豆で代用するといいでしょう。
カフェ・フィンを使う場合はフィルターの目が粗いため、コーヒー豆は粗挽きにした方がいいです。あまり細かいと、抽出したあとカップに粉が落ちてしまう場合があります。
練乳をたっぷり入れたカップの上に、カフェ・フィンをセットし、じっくり時間をかけながら抽出していきます。粉の上に中ぶたをかぶせる形式で、そのふたの重みで圧縮しながらジワジワと抽出するのです。
5分~10分かけて抽出が終わると、カップの中はコーヒーが上、練乳が下、というように二層に分かれた状態になります。これをしっかりと混ぜ合わせれば、ベトナムコーヒーのできあがりです!
また、アイスにする場合は、コップにたっぷりの氷を入れておきましょう。そこに練乳とよくかき混ぜた熱いベトナムコーヒーを注げば、アイスベトナムコーヒーができます。
濃くてとっても甘いベトナムコーヒーを、ぜひご堪能ください!
まとめ
コーヒー好きの方でも、触れる機会の少ないベトナムコーヒー。
その背景を知り、豆の特徴を知ると、一度は試してみたい気持ちになりますよね!
普段はブラックコーヒー派の人でも、甘い物が苦手でないなら、案外美味しくいただけると思いますよ。
ベトナムに思いを馳せながら、ぜひ一度お試しください。
あなたのコーヒータイムが、また違った味わいになることは間違いありません。