太平洋とカリブ海に挟まれた自然豊かな国、コスタリカ。
とても小さな国でありながら、コーヒー豆に対しては国を挙げて大きなこだわりをもっています。また、上質で豊かな味わいを持つコーヒー豆を生産していることでも有名です。
このページでは、コスタリカのコーヒー豆の銘柄や特徴、生産事情などについて詳しくお伝えしていきます。また、ハニープロセスという独特な製法についてもご紹介していきます。
コスタリカ産コーヒー豆の生産事情
コスタリカのコーヒー豆は質が高いことで有名です。また、質が高いだけでなく、その上品な味わいには世界中のコーヒー好きも一目置いています。
では早速、質の高いコーヒー豆を作るコスタリカの生産事情を見ていきましょう。
大自然に囲まれた国「コスタリカ」
コスタリカは中央アメリカの南部に位置し、北にニカラグア、南東にはパナマという、二つの国に挟まれています。また、南側は太平洋、北側はカリブ海に面しています。
国土は日本の北海道よりも小さい国です。
首都サンホセには文化施設も多くある反面、国土の4分の1が保護地域とされるジャングルのため、野生動物も多く生息しています。そこにはクモザルやケツァール鳥など、珍しい動物も多数見ることができます。
コーヒー産業の恩恵
1846年~1890年ごろまでの約50年間は、コスタリカにとってコーヒーが唯一の輸出品でした。コーヒーで稼いだ外貨を使って、国内のインフラの多くが整備されたほどです。
鉄道、国立病院、郵便局、図書館に大学、国立劇場もすべてコーヒー産業によってコスタリカにもたらされたものでした。
ちなみにコーヒー豆の生産量は世界16位。(2017年調べ)
現在も世界に向けて、質の高いコーヒー豆を輸出しています。
コーヒー豆の生産地(農園)
コスタリカは小さな国ではありますが、いくつものコーヒー豆の生産地(農園)が存在します。生産地には火山帯が横断し、標高差のある変化に富んだ地形が特徴的です。
火山灰を含む土壌、雨の多い熱帯性気候、乾期と雨期のバランス、そういった地質的条件と気候条件が、コーヒーの栽培にとても適しています。そのおかげで、質の高いコーヒー豆を生産できているのです。
それでは代表的な生産地を紹介していきます。
セントラルバレー
首都サンホセにある地域です。人口も多く、コスタリカの中では一番古くからコーヒー豆を生産しています。3つの主要な火山があり、土壌がコーヒーの栽培に向いている地域です。
生産地区はサンホセ、エレディア、アラフエラ。
ウエストバレー
ウエストバレーの生産地区は6つに分けられます。
サン・ラモン、パルマレス、ナランホ、グレシア、サルチ、アテナス。
サルチには、この町で発見されたコスタリカ特有の品種があり、「ヒジャ・サルチ」と呼ばれています。カップに注いだ時の風味がとても素晴らしい品種です。
ナラホンは標高が高く、この6つの地区では群を抜き、驚くほど美味しいコーヒーを生産しています。
タラス
タラスは長い間、コーヒー豆の品質においてとても高い評価を受けています。コスタリカ国内で最も高い標高にあるコーヒー農園があることも、タラス産のコーヒー豆が高品質だと評価される理由の一つです。
トレス・リオス
首都サンホセの東に位置する地域。比較的、小規模な生産地になります。
イラス火山の恩恵を受けているので、土壌的にはコーヒー生産に良い影響を与えている場所です。ただ首都周辺ということもあり、都市開発のあおりを受けることがコーヒー生産にとっての脅威となっています。
土地の売却とともに、コーヒーの生産量が年々減少している地域です。
オロシ
トレス・リオスよりさらに東に位置する小規模な生産地です。長く延びた渓谷が特徴的で、その周辺にあるオロシ、カチ、パライソが合わさった地区となります。
ブルンカ
パナマ国境近くの生産地です。第二次世界大戦後に、イタリアからの入植者が地元の人たちとコーヒー農園を始めたことから生産が始まりました。
カトゥーラ、カトゥアイという品種が多く栽培されています。
トゥリアルバ
他の地域よりも収穫時期が早いのが、このトゥリアルバの特徴です。雨量や気候などの影響といわれていますが、コーヒー豆の品質は全体から見ても、あまり良い方ではありません。
グアナカステ
西部に位置する生産地です。土地は広大ですがコーヒー豆の栽培はほんの一部でしか行われていません。生産量はそこそこ多いものの、標高が低いので品質の高いものや味を楽しめるようなコーヒー豆は栽培されていません。
この地域はコーヒー豆よりも、むしろ牛の飼育や米の生産に力を入れています。
農園を守るICAFE(コスタリカ・コーヒー協会)
コスタリカでは昔から、国を挙げてコーヒーの生産が強く奨励されてきました。
コーヒー豆の栽培を希望すると、土地を提供されるなど、政府自体がコーヒー豆の生産に力を入れてきたのです。その影響もあり、現在ではコスタリカでコーヒー豆の生産に関わっている農家は、およそ8万件を超えるといわれています。
1933年には、不当な買い上げなどから小規模農家を守るため「コーヒー保護協会」が設立されました。それが現在では「ICAFE(コスタリカ・コーヒー協会)」となり、今もコスタリカのコーヒー生産全体を管理しています。
また、農園の運営などにも力を入れており、協会の仕事は多岐にわたっています。コスタリカのコーヒー品質を守るための重要な役割を担っているのです。
コスタリカ産コーヒー豆の特徴
コスタリカはコーヒー豆の品種や格付けに強いこだわりをもっています。
恵まれた環境と気候を併せ持つだけでなく、並々ならぬこだわりによって上質なコーヒー豆が生み出されているのです。
品種はアラビカ種のみ
コスタリカでは、1988年からアラビカ種以外のコーヒー豆の生産が禁止されています。
品質が下がるのを防ぐため、低品質であるロブスタ種などの生産は禁止されています。政府によってアラビカ種以外の生産が禁止されることは、世界で見ても前代未聞のできごとでした。
ですが、これは国を挙げてのコーヒー豆に対する強いこだわりの証なのです。自国のコーヒー豆の品質を維持し、最高級のものを作り上げたいという意気込みが感じられます。
コーヒー豆の等級や格付け
コーヒー豆の等級や格付けの仕方は、それぞれの国によって違いがあります。
コスタリカでは栽培地の標高に加え、太平洋側と大西洋側のどちらで栽培されているかによってグレードが決まっています。
以下は、それぞれ上から順に高品質のコーヒー豆となります。
- SHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)
標高1200m以上1650m未満 - GHB(グッド・ハード・ビーン)
標高1000m以上1200m未満 - HB(ハード・ビーン)
標高800m以上1000m未満
- HGA(ハイ・グロウン・アトランティック)
標高900m以上 - MGA(ミディアム・グロウン・アトランティック)
標高600m以上900m未満 - LGA(ロウ・グロウン・アトランティック)
標高150m以上600m未満
- MHB(ミディアム・ハード・ビーン)
標高500m以上1000m未満
ちなみに、この格付けの標高未満のコーヒー豆は、格付け評価なしとして低価格で販売されます。これらは輸出用ではなく、コスタリカ国内での消費用です。
コーヒー豆の銘柄
コスタリカ
コスタリカ産コーヒー豆の中では、その名のとおり「コスタリカ」が代表的な銘柄です。豆は大粒で、柑橘系の上品な酸味と柔らかい味が特徴的。ブレンドを作る際にも欠かせない銘柄となっています。
コスタリカ・カフェ・ボニータ
ボニータは「美しい」「かわいい」という意味があります。酸味がさわやかで、苦みの中にあるスッキリと軽やかなコクが特徴的です。日本であまり見かけることはありませんが、ヨーロッパではポピュラーな銘柄となっています。
コスタリカ・コーラル・マウンテン
品のある味わいと酸味を感じることができるのが特徴的。上品でフローラルな香りと優しい酸味が、なんともいえない優雅な味わいを感じる銘柄です。
独特な精製製法「ハニープロセス」
豊かな甘みと上品な酸味が特徴的なコスタリカのコーヒー豆。
実はその味わいは、独特な精製方法「ハニープロセス」が引き出しているのです。
中央アメリカ特有の精製方法
ハニープロセスは、コスタリカやエルサルバドルなど、中米諸国では多く採用されている精製方法です。この精製方法によって、コスタリカ特有のコーヒー豆が作り出されています。
一般的な精製方法はウォッシュド(水洗い式)といって、豆の周りの果肉や果皮、ぬめりのある部分(ミューシレージ)を水洗いですべて取り除いてから乾燥させます。
ですがハニープロセスの場合、果肉や果皮は取り除きますが、ぬめりのある部分(ミューシレージ)は残した状態で乾燥させます。そのぬめりのある粘液が乾燥することで糖分が凝縮され、コーヒー豆に蜂蜜のような甘さと深いコクをもたらすのです。
ちなみに、スペイン語ではミューシレージ(ぬめりのある部分)のことを「ミエル(miel)」と呼び、このミエルは蜂蜜を意味します。これが蜂蜜を使うわけでもないのに、ハニープロセスと呼ばれる由縁です。
ハニープロセスの種類と味
ハニープロセスでは、ミューシレージ(ぬめりのある部分)の残し具合によって、コーヒー豆の色や味も変わってきます。
除去したミューシレージの量による呼び名や味の違いは以下の通りです。
- ほぼ除去しない ⇒ ブラックハニー
- 20%~25%除去 ⇒ レッドハニー
- 50%程度除去 ⇒ イエローハニー
- 75%~80%除去 ⇒ ゴールデンハニー
- 90%以上除去 ⇒ ホワイトハニー
- ブラックハニー ⇒ 甘く香ばしいキャラメルのような風味
- レッドハニー ⇒ たっぷりの甘みに赤ワインのような風味と濃厚さ
- イエローハニー ⇒ オレンジやアップルのようなさわやさと甘み
- ゴールデンハニー ⇒ 蜂蜜のような甘さの中に柑橘系の甘酸っぱさ
- ホワイトハニー ⇒ キャラメルやミルクチョコのような甘さとコク
まとめ
コスタリカ産コーヒー豆の多彩な味わいは、想像するだけではなかなか感じ取ることできないでしょう。他にはないその味を、一度ご自身の舌で味わってみることをオススメします。
もしお店などで見かけた際には、ぜひ手に取ってみてくださいね。
きっとコスタリカのコーヒーに対する強いこだわりを感じることができるはずです。