南米の最北端に位置する国、ベネズエラ。
自然豊かなこの土地で作られるコーヒー豆には、「知る人ぞ知る」質の高いコーヒー豆が含まれています。
しかし、ベネズエラ産のコーヒー豆を、日本で目にすることはほとんどありません。
なぜなのでしょうか?
そこで今回は、ベネズエラのコーヒーの歴史や、豆の特徴・銘柄について詳しくお伝えしていきます。最後まで読んでいただければ、きっとベネズエラのコーヒーについて詳しくなれるはずですよ!
ベネズエラの歴史とコーヒー事情
正式名称はベネズエラ・ボリバル共和国。南米でも屈指の自然の宝庫といわれています。
西にはコロンビア、南にはブラジルというコーヒー大国二つと隣接しており、北側はカリブ海に面した南米最北端に位置する国です。
また、農産物も数多く生産されている国ですが、自然の宝庫といわれるのには別の理由もあるようです。
自然の宝庫「ベネズエラ」
ベネズエラが自然の宝庫といわれる理由は、原石や資源がとても豊富な土地だからです。
特に原油の埋蔵量は世界最大、世界でも上位の石油の産出国なのです。石油はベネズエラの輸出総額の90%以上を占めており、石油産業によってこの国は支えられているといえます。
以前はカカオや砂糖、バナナや棉花、コーヒーといった農産物も輸出用として生産されていましたが、今では石油の輸出がほとんどとなっています。
コーヒー豆の歴史
1730年頃、イエズス会の神父によって、ベネズエラにコーヒーが伝えられたといわれています。当時は奴隷労働によって、この国の農業は支えられていました。
タバコやカカオの農園はよく知られていますが、1784年からコーヒーの生産が始まり、1793年には大きなコーヒー農園があったという記録も残っています。
1811年、独立宣言をしたベネズエラですが、一旦は失敗。
その後、1830年に晴れてベネズエラとして独立しました。その頃からコーヒー豆の生産は盛んになり、その他の農産物もベネズエラの主要な輸出品として位置づけられていきます。
当時ベネズエラは、世界の生産量のおよそ3分の1のコーヒー豆を生産していたのです。
それほどにベネズエラのコーヒー産業は盛んでした。
ですが1920年代に入り、ベネズエラの経済は次第に石油資源に頼るようになっていきます。その流れと余波から、コーヒー産業への陰りが見え始めたのでした。
そして現在では、ベネズエラ産のコーヒー豆の輸出は激減している状態です。
コーヒー豆の生産量
もともとはコロンビアに匹敵するほどの、コーヒー豆の生産量を誇っていたベネズエラ。
ですが今では、国内でもコーヒー豆の生産自体が重要視されなくなり、縮小の一途をたどっています。
2017年調べによると、ベネズエラのコーヒー豆生産量は世界で21位。
ちなみにコロンビアは3位です。
かつてコロンビアと肩を並べるほどの量を生産していたことを考えると、減少の度合いが大きいことがわかります。
そしてコーヒー豆の輸出量は、総生産量の1%にも満たない量です。生産されたコーヒー豆のほとんどが、ベネズエラの国内で消費されているのです。
ベネズエラのコーヒー豆の生産地
生産量が減少したとはいえ、世界で見れば決して少なくない量を生産しているベネズエラ。
その生産地はどのような場所なのでしょうか?
ベネズエラのコーヒー豆は、コロンビア側からカリブ海に向かって走る「アンデス山脈」と「ラコスタ山脈」が主な栽培地域です。
温暖な気候と適度な降雨量、そしてコーヒー豆の栽培に適した標高も揃っており、上質なコーヒー豆を作るには最適の環境といえるでしょう。
西部地域
ベネズエラのコーヒー豆の大半が、西部地域で栽培されています。
日本ではほとんどお目にかかれないと思いますが、もしかしたらタチラ州・メリダ州・スリア州といった州名が記載されているものを目にすることがあるかもしれません。
中西部地域
コロンビアとの国境に近い地域で、ベネズエラ産の最高品質のコーヒー豆は、中西部地域で生産されたものといっていいでしょう。この地で生産され輸出されるコーヒー豆には、港の名前がつけられ、「マラカイボ」と呼ばれています。
中北部地域
中北部地域の生産量は極めて少量ですが、連邦政府直轄領とその他複数の州によってコーヒー豆が生産されています。
東部地域
東部地域で生産されたコーヒー豆の中には、「カラカス」という銘柄の豆があり、もしかしたらどこかでお目にかかることもあるかもしれません。
ベネズエラ産コーヒー豆の品質
高品質な豆であれば、目を見張るほどの美味しさを持つベネズエラ産のコーヒー。
ですが、そういったコーヒー豆を見つけることはまず難しいでしょう。
そもそも国自体の、コーヒー産業に対する重要度が低くなっているので、味や品質に対する関心も低いといえます。今現在、輸出される量も少なく、また品質も定かではありません。
ですので、信頼できる焙煎業者が販売しているものに限り試してみる、という心構えも必要にはなってくるかと思います。
コーヒー豆の種類
ベネズエラで生産されている品種はアラビカ種です。
同じ南米でも、他の国で生産されたアラビカ種とは異なり、個性的な味わいがポイントです。
アラビカ種の中でも酸味が少なめ、全体的に優しい味わいとなっています。
コーヒー豆の品質を表す等級
コーヒー豆には、各国でそれぞれ等級が定められています。
もちろんベネズエラも例外ではありません。
ベネズエラ産コーヒー豆の等級 | ||
Aランク | スーペリオール | 大粒 |
Bランク | セグンダ | 中粒 |
Cランク | テルセラ | 小粒 |
PB | カラコル | 丸豆 |
※PB=ピーベリーの略
ベネズエラ産コーヒー豆の特徴
ベネズエラ産のコーヒー豆(生豆)は、緑色を帯びた黄色の見た目をしています。
味は柔らかめなのが特徴で、浅煎りよりも深煎りの方が、チョコレートのような味と風味を楽しむことができます。
銘柄はどんなものがある?
日本で販売されているものを見つけるのは、至難の業かもしれません。
ですが、実際には以下の銘柄がベネズエラで生産されています。
- メリダ
- カラカス
- マラカイボ
- ククタ
- トゥルヒロ(トルヒーヨ)
- タチラ
- カリペ
- ボコノ
どこかでこれらの銘柄を見かけることがあれば、試してみるのもいいでしょう。
またその際には、信頼できる焙煎業者かどうかをしっかりと確認しておきましょう。
味の特徴とは?
ベネズエラのコーヒー豆は、全体として酸味が少なく甘みがあるのが特徴です。
コクがあり、独特な苦みと適度な香りも楽しめ、どちらかというと繊細さを感じさせるコーヒー豆となっています。
ベネズエラ産コーヒー豆にピッタリの飲み方
ベネズエラ産コーヒー豆は、中深煎り~深煎りの焙煎がおすすめです。
この焙煎度合いであれば、ミルクや砂糖との相性がとても良く、ラテにして飲むと美味しくいただけます。酸味が少ない分、ミルクのまろやかさも生かされ、ブラックで飲むのとはまた違った味わいを楽しむことができます。
まとめ
恵まれた環境を持ちながらも、国の事情などで生産が減り、なかなか出会うことのない希少なベネズエラのコーヒー豆。
やはりコーヒー好きとしては、「一度は味わってみたい」そう思わされることは間違いありません。遠い南米の地には、まだまだ私たちの知らない美味しいコーヒーが眠っているのかもしれませんね。ベネズエラにはそんなワクワク感を覚えました。
機会があればぜひご自身の舌で、ベネズエラのコーヒーを味わってみてくださいね!