コーヒー豆の専門店に行くと、ときどきエクアドル産のコーヒー豆を見かけます。
ですがエクアドルという国のコーヒーについて聞かれても、案外答えることができない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、エクアドルのコーヒーの歴史や、豆の銘柄・特徴などについて詳しくお伝えしていきます。品質や味についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
エクアドルのコーヒー事情
そもそもエクアドルがどこにある国かはご存じでしょうか?
まずはそのあたりも交えながら、エクアドルのコーヒー事情についてまとめました。
赤道直下の国エクアドル
コロンビアとペルーに挟まれた位置にある、南米の小さな国、それがエクアドルです。
(正式名称はエクアドル共和国)
南米と聞くと、ブラジルやコロンビアの影響もあってか、コーヒー豆の産地としてはなぜかしっくりきます。ちなみに、首都は「キト」です。
エクアドルという国名の意味は「赤道」。まさにエクアドルは赤道直下の国なのです。
コーヒー豆の歴史
1860年頃、他の国よりやや遅れてエクアドルにコーヒー豆が持ち込まれ、栽培が始まりました。ちょうど日本にコーヒー豆が入ってきたのは幕末のころ。エクアドルと同じくらいの時期といえます。
1905年に南太平洋に面したマンタ港から、ヨーロッパへの輸出が始まりました。
1920年代、もともと生産に力を入れていたカカオが、病気によって国全体に損害を与えます。そのとき各農家がコーヒー豆の生産に切り替え、力を入れ始めたことから、コーヒー豆が盛んに栽培されるようになったのです。
もともとエクアドルは、バナナやエビ、カカオの産地で有名でした。そこへ新たにコーヒー豆も加わったということになります。
エクアドル産コーヒー豆の品質と特徴
はっきりと言ってしまえば、エクアドル産のコーヒー豆の多くは品質が高くありません。
品質が高くないので、生産されたコーヒー豆の83%がインスタント用なのです。
輸出先はお隣の国コロンビア。コロンビアは自国の豆の品質が高く、ブランド性も高いので、インスタント用は隣国エクアドルから輸入をしているという関係です。
また、エクアドルの人たちは、インスタントコーヒーをよく飲みます。ですが、インスタントコーヒー自体は国内産のコーヒー豆では高コストなので、ベトナムからインスタント用のコーヒー豆を輸入している状態です。国内産はほぼ輸出用といっていいでしょう。
品質の評価が低いワケ
エクアドルという国は良質なコーヒー豆を作るのに必要な標高もあり、地理的条件も悪くありません。
では、なぜ品質の低い豆が多いのでしょうか?
その原因は豆の乾燥方法にあります。
生産コストを抑えるため、あえて収穫せずに木に実ったままの状態で、コーヒーの実ごと乾燥させているのです。また、収穫したあとに乾燥させる方法もありますが、「カフェ・ラ・ボラ」と呼ばれる自然乾燥方式を取っています。
これらの乾燥方法こそが、エクアドル産コーヒー豆の品質を下げている原因といえます。
恵まれた地理的環境と気候
エクアドルはアンデス山脈の影響を受け、火山灰質でミネラルを多く含む肥えた土壌をもっています。さらに水はけも良いので、コーヒー豆を栽培するには条件のいい土地柄なのです。
また、標高の高い場所もあるので、実は「良質なコーヒー豆を生産できるのではないか」と目をつけている人たちも多いのです。
恵まれた地理的環境に加え、気候面も良く、素晴らしいスペシャルティコーヒーを生産できるであろうという期待が、徐々に高まりつつあります。
エクアドルはコーヒー好きな私たちにとって、今後が楽しみな国といえるでしょう。
エクアドル産コーヒー豆の種類と生産地
コーヒー豆の栽培に適した環境を持つエクアドルですが、生産しているコーヒー豆の種類はどういったものなのでしょうか?
生産地と併せて詳しく見ていきましょう。
コーヒー豆の種類
コーヒー豆の品種としては、アラビカ種・ロブスタ種の両方を生産している数少ない国の一つです。
アラビカ種の生産は約60%で、いくつかの銘柄がさまざまな生産地で作られています。
また、ロブスタ種の生産は約40%で、輸出用のほとんどが低品質なものとなります。
コーヒー豆の生産地
生産地はエクアドルの各地にいくつも存在します。
それぞれの産地によって標高はさまざまで、品質もさまざま。
標高が低い土地はともかく、標高が高い土地に関しては、これから良質なコーヒー豆が生産される可能性に期待が寄せられています。
マナビ
アラビカ種の大半はこのマナビで生産されています。標高は700m以下なので、良質なコーヒー豆を作るには少し標高が低すぎる土地ではあります。
ただアラビカ種が多く作られているだけあり、日本でも目にする銘柄がいくつか生産されています。(銘柄についての詳細は後述します。)
ロハ
アラビカ種のおよそ20%がロハで生産されています。標高は最高で2100m、エクアドル南部の山岳地域にあたります。
ロハで栽培されるコーヒー豆は、いずれ高品質なスペシャルティコーヒーになるのではないかと期待する業者も多いのです。
ただ悪天候を受けやすい土地でもあるので、ベリーボラー(害虫)の被害が起こりやすい地域でもあります。良質なコーヒー豆への道はまだ遠いのかもしれません。
エルオロ
アンデス山脈の一部を含む場所であり、標高は1200mほどあります。しかし生産量は国全体の10%以下です。また、特に目立った銘柄はありません。
サモラ・チンチペ
ロハの東隣に位置し、標高は1900mと良質なコーヒー豆を作るにはなかなかの環境です。しかし実際には、アラビカ種のみの生産量で見ると、国全体の4%ほどしか作られていません。
ちなみにサモラ・チンチペの栽培方法は、有機栽培が一般的です。
ガラパゴス諸島
少量ではありますが、ガラパゴス諸島でもコーヒー豆の栽培があり、銘柄もあります。標高は350mほどと低いのですが、標高の高い地域と気候が似ているため、良質なコーヒー豆の生産が期待されています。
ガラパコス諸島は世界遺産に登録されているので、基本農法としては化学肥料なし・農薬なしの有機農法となっています。
エクアドル産コーヒー豆の銘柄
さまざまな生産地があるエクアドルですが、果たしてどのような銘柄があるのでしょうか?
味などの特徴と併せてまとめましたので、詳しく見ていきましょう。日本でたまに目にする銘柄もありますが、ほとんど見かけないレアなものもありますよ!
グレートマウンテン
エクアドルではアラビカ種の大半を生産している「マナビ」で作られています。
酸味と甘みに加え、苦みもほどよく、上品な風味が特徴。「エクアドルのブルーマウンテン」とも呼ばれ、人気のある銘柄です。
手摘みで摘み取って収穫される高級なアラビカ種が使われていますので、エクアドル産コーヒー豆の中では質の高い銘柄となります。
また、バナナやココアの木をコーヒーの木の間に栽培する、伝統的な森林農法「シェイドツリー」を採用。南米の暑い日差しを適度に和らげ、落ち葉は堆肥となり、コーヒーの木に栄養を与えるという栽培方法で作られています。
アンデスマウンテン
ナッツ系の風味と香りを楽しめるのがアンデスマウンテンの特徴。やわらかな苦みと甘み、さっぱりとした酸味が味わえるコーヒーです。そしてその中にはしっかりとしたコクも感じられます。
グレートマウンテンと同じ、マナビで生産されています。地形が険しい場所で栽培されるため、収穫量も制限があり、なかなか貴重なコーヒー豆となります。
ナチュラレッサ
マナビの有機栽培珈琲であるナチュラレッサ。さっぱりとしたのどごしに、酸味とコクもほどよく楽しめる味です。どちらかというとやわらかめの味といえるでしょう。
エクアドルでは有機栽培が一般的なところも多く、マナビにあるナチュラレッサの生産地も例外ではありません。農薬を使っていないということはもちろん、その加工の過程、保管状況と流通の過程においてもしっかりと管理されています。
ビルカマウンテン
ロハにあるビルカバンバ村で生産されているビルカマウンテン。
味の評価はなかなかで、メイプルシロップのような甘みとチョコレートの風味を感じられる味です。酸味とコクの度合いもよく、全体的にバランスのとれたコーヒー豆です。
ビルカバンバ村は山岳地帯の谷にある村で、「聖なる谷」と呼ばれる場所。気候は過ごしやすく、水もきれいで空気もよく、とても素晴らしい環境です。実はビルカバンバ村は、世界三大長寿村の一つなのです。
サン・クリストバル
ガラパゴス諸島のサン・クリストバル島で作られているコーヒー豆です。
ハーブの香りと似た風味にフルーティーな甘みと酸味、ローストしたナッツのような苦みと香ばしさを感じる味が特徴的。少し独特な味という印象で、複雑かつ興味深い味といえるでしょう。
ガラパゴス諸島は世界遺産に登録されているため、肥料・農薬の使用が一切禁止されています。そのため、サン・クリストバルもオーガニック認証を受けています。
まとめ
ときどき見かけるエクアドル産のコーヒー豆ですが、掘り下げてみるとその背景とともに奥深さを感じます。同じエクアドル産でも、さまざまな銘柄があり特徴もいろいろ。
そのすべてを味わうことができれば、エクアドルという国を少し身近に感じることができるのではないでしょうか?
希少価値の高い豆もありますが、ぜひお店で見かけたらエクアドル産のコーヒーを味わってみてくださいね。深く味わうことで、心は南米へ飛んで行けるかもしれません。